知れば知るほど面白い「腸内細菌」の世界

腸内環境

 

どうも、こんにちは。

 

かつて、居酒屋で『お通しはありません』と書かれた貼り紙を見かけた際に、「お通し(おとおし)」という言葉を「お通じ(おつうじ)」と当たり前のように見間違えて、何事かと思わず二度見してしまったことのある山城です。

消化器内科医の「職業病」とでも言えばそれまでですが、どうせならもう少し誰かの為になる形や場面で“発症”してくれれば良かったのに、と思わずにはいられません。

 

──なんて、「お通し」代わりにちょっと恥ずかしいエピソードを披露してみたところで、今回は「腸内細菌」について少しお話していきたいと思います。

「本題への導入がいささか雑では?」という“正論”は、どうかそっと心のうちに収めておいてください(笑)

 

 

さて、一口に「腸内細菌」と言いますが、実は人間の体内には約「3万種」、およそ「2千兆個」もの腸内細菌が存在していると言われています。

この腸内細菌は、体外で培養することはできず、人の身体の中でしか生きることのできない菌なのですが、この腸内細菌の働きが、人の健康に対して色々な作用や影響を及ぼしていることが、近年の研究でどんどん明らかになってきているんです。

 

また、ここ最近は「腸内環境を整えるための努力や生活習慣への取り組み」という意味で、「プレ(プロ)バイオティクス」「腸活」という言葉などが市民権を得るようになったりと、腸内細菌に対する世間的な関心や知識も、以前に比べてだいぶ高まってきていると言えるでしょう。

実際、花粉症などの「アレルギー症状の緩和」や「内臓脂肪の減少促進」、あるいは「高血圧の改善」など、特定の効果が期待される乳酸菌や成分の配合されたヨーグルトや健康食品の数は、ここ十年ほどの間に爆発的な増加を見せています。

 

 

一方で、一般的に「腸内環境を整える」ことの目的としては、「便秘」や「下痢」といった慢性的な症状や体質の改善に、最も強くフォーカスが当てられているように思われますが、実は「腸内細菌」の秘める力というのは、そんなものにとどまるものではないんです。

もちろん、普段の「便秘」や「下痢」といった便通の問題は、健康の根幹にも関わる非常に重要な問題ですので、決してないがしろにしていいものではありません。

 

ですが、「潰瘍性大腸炎」「クローン病」といった胃腸の病気だったり、「肥満」「痩せ」といった体質的な症状だったり、あるいは「高血圧」「高脂血症」「糖尿病」のような生活習慣病だったりにも、この「腸内細菌」の働きが大きく関与していることが解明されてきています。

また、「喘息」「アトピー」などのアレルギー症状への影響のほか、幼少期における「ADHD(注意欠如・多動症)」や、高齢者における「うつ」「がん」の発症にさえ、腸内細菌の存在が影響を及ぼしているとの研究結果も報告されているほどです。

 

 

この「腸内細菌」に関する研究はまだまだ発展途上にあると言えますが、「腸内細菌を活性化させる」ことは、単に「お通じを良くする」だけにとどまらない、僕たちの「健康を保つ上でとても有用で価値のある努力」だと言えるでしょう。

ちなみに、腸内細菌の“パワー”にまつわる面白い話は色々とありまして、折角なので、ここで少し紹介したいと思います。

 

ユーカリを食べるコアラ

 

さて、その愛くるしさで世界を魅了してやまないコアラくん。

 

彼らが「ユーカリ」の葉っぱを好んで常食していることは、多くの方がご存じのことと思われますが、実はこのユーカリの葉っぱ、コアラ以外の動物には消化吸収することができないほど、繊維質が堅く豊富なんです。

しかもご丁寧なことに、葉っぱには毒性まであったりします。

 

そんなとことんまで食用に向かないはずのユーカリの葉を消化し、きちんと栄養として吸収し、更には解毒まで行うことができるのも、ひとえに「コアラの体内にしか存在しない特殊な腸内細菌」の働きによるものなんです。

 

 

また、野生のゴリラは、肉や魚などをまったく食べないのにもかかわらず、見る者を圧倒する筋骨隆々な肉体を誇っていますが、ここにも腸内細菌の働きが隠れていると言われています。

 

たまに昆虫くらいは食べることもあるようですが、ゴリラの主食は木の実や果物、草や樹皮など、決してタンパク質が豊富とは言えないものばかり。

ですが、それらが体内で消化吸収される際に、特殊な腸内細菌の働きによってタンパク質が合成され、彼らの屈強な肉体が作り上げられる訳です。

 

同じように、ミクロネシアのとある地方でジャングルに住まう民族の方々も、木の実や葉っぱ、果物などが主食であり、一生のうちに肉や魚を口にすることはほとんどありません。

にもかかわらず、やはり逞しい体躯が維持されているのは、先のゴリラと同じような腸内細菌の変化が、彼らの体内でも起こっているためではないか、と言われています。

 

そのほか、もっと身近な例で言えば、本当にもう何年も何十年も肉を一口も食べていないというベジタリアンの方でも、きちんと元気で健康な身体を維持している方もいらっしゃいますが、もしかすると彼らの体内でも、何かしら腸内細菌の変化が起きているのかもしれません

こういった話に鑑みても、「腸内細菌」の働きや秘められた力については、今後も研究が進むにつれて、まだまだ色々と面白い話題が“発掘”されることになりそうです。



「じゃあ、どうやったら腸内細菌を良い状態に整えられるの?」

 

 

皆さん、当然お思いのことと思います。

 

それこそ、肉や魚、脂っこい食べ物などの「悪玉菌のエサ」を控えめにし、ヨーグルトや漬物、納豆といった発酵食品や食物繊維の豊富な野菜など、言わば「善玉菌のエサ」を豊富に含んだものを、地道にコツコツと摂取することなどは、やはり「王道」にして「近道」と言えるでしょう。

「継続は力なり」とは、よく言ったものです。

 

ちなみに、まだあまり世間に広く知れ渡っていないだろう情報で言えば、腸内細菌を大きく活性化させる成分として、近年は「グアーガム」に注目が集まりつつあります

 

グアー豆の画像

「グアー豆」

 

この「グアーガム」は、主にインドやパキスタンに生息するエンドウ豆の一種である「グアー豆」から得られる「水溶性の食物繊維」なのですが、善玉菌を増やし、腸内環境を改善する効果に非常に優れていることが、近年の研究で明らかになっています。

 

同じく水溶性の食物繊維であり、同様の作用や効果の期待できる成分としては、既に「難消化性デキストリン」が世間に広く浸透していますが、皆さんも一度は、その名を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

この「グアーガム」は、その「難消化性デキストリン」よりも、腸内細菌による発酵率(利用率)が高い──つまり「腸内環境の改善により効果的」だと言われているのです。

 

残念ながら現時点では、まだまだ「価格」や「入手の容易さ」という点で「難消化性デキストリン」に軍配が上がるのですが、これから「グアーガム」への注目度が高まることになれば、いずれ状況が逆転することになるかもしれませんね。

 

 

 

知れば知るほど面白く、まだまだ底の知れない「腸内細菌」の世界。

今後も、折に触れて「腸内細菌」や「腸内環境」をテーマにお役立ち情報を発信していければと思っておりますので、どうぞご期待ください。

 

山城   

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