【連載】『やましろあれこれ:大腸がん』(中編)

消化器内科

 

どうも、こんにちは。

毎回、冒頭の挨拶を捻り出すために頭を抱えるようになってからというもの、これまであまり価値を見出していなかった「時候の挨拶」なる形骸化しつつある文化が、途端に先人の編み出した“英知の結晶”のように思えて仕方なくなってきた山城です。

 

さて、「唐突な思い付き」という名の “天啓” を受け、先日より突如として始動した「短期集中連載」企画ですが、前回の更新後、全体の内容と構成とを改めて推敲した結果、全3部構成としてお届けする運びと相成りました。

ということで、第2弾となる今回は「中編」と銘打ち、引き続き「大腸がん」の“あれこれ”についてお伝えしていきたいと思います。

 

「前編」では、「大腸がん」の大きな特徴の一つとして、「がんの中でも特に遺伝性が強く、自覚症状も表れにくい」ことについてお話し、しかし同時に「きちんとした対処を行うことで、大腸がんは予防することも可能」だということをお伝えしました。

そこで「中編」では、「大腸がんを予防するための方法」に大きく焦点を当ててお話していきたいと思います。



では、改めまして。

 

まず最初に、一口に「大腸がんを予防する」と言っても、現状では大きく二つの方法に分けることができるでしょう。

そのうちの一つが、「遺伝子治療」です。

 

「遺伝子」そのものに対して、直接的に治療や修復を施すことが可能なため、「大腸がん」のように「遺伝性の強い疾患」の予防や治療に対しても大きな効果が期待できると言えます。

ですが「遺伝子治療」は、現在でも「最先端医療」と呼ばれる技術の一つ。その治療費についても「自費診療」扱いとなってしまうため、多くの方にとっては、まだあまり現実的な選択肢だとは言い難いでしょう。

 

では、どうすれば良いのでしょうか?

 

 

答えは、非常に簡単です。



 

 

 

 

「なるべく早いうちから定期的に大腸カメラ検査を受けて、なるべくこまめに大腸ポリープを摘み取っていく」

 

ただそれだけの単純なことで、ほとんどの「大腸がん」は予防できるんです。



「後編」でもう少し詳しくお話する予定ですが、要するに「大腸ポリープ」とは、「将来的にがんになってしまうかもしれない芽」のようなものだと言えます。

 

だから、早めにその “芽” を綺麗さっぱり摘み取ってしまえば、「がん」という“花”は咲くことができなくなってしまう、という寸法です。

……自分で例えておいてなんですが、何とも嫌な「花」もあったものですね(笑)



ここで大事なのは、「芽」が「悪性化」して「がん」という「花」を咲かせてしまう前に刈り取ってしまえるかどうか、ということ。

だから、特にご家族やご親戚、二親等や三親等にまで遡った時に、40代とか50代とか若くして「大腸がん」で亡くなった方がいるような場合には、仮に「芽」があったとしてもまだ小さいだろう20代のうちに、やはり一度は検査を受けておいた方がいい、という訳なんです。

 

なお、「家族や親戚など近しい関係性の中に、若くして大腸がんで亡くなった方はいないよ」という方に関しても、少なくとも40代から50代のうちに一度は、大腸カメラ検査を受けてほしいと思います。

というのも、一般的にがんの「適齢期」は60代から70代と言われており、その一歩手前と言える40~50代あたりで一度検査を受けていれば、ほとんどの大腸がんは予防できると言われているからです。


 

ちなみに、なるべく早い段階から定期的に検査を受けてほしい理由については、もうご理解いただけたものと思われますが、「じゃあ、どのくらいの頻度で受ければいいの?」と、皆さんきっとお思いのことでしょう。

 

これについては色々な報告があるため、絶対的に「これが正解だ!」と断言できず心苦しいのですが、やっぱり遺伝的な要因が強い方は、できれば「年に一回」は受けた方がいいと言えます。

そうでもない方の場合には、もう少し頻度は低くても構わないでしょう。

 

 

ただ、「大腸がん」はあくまでも「遺伝的な要因が強く影響する」というだけで、「遺伝的要因がなければ発症しない」という訳ではありません。当然、「大腸がん」にも「後天的なリスク因子」というものが存在します。

例えば、「便秘」がそうです。

 

排泄のサイクルが滞れば、それだけ身体の中にどんどん不要なものが溜まってしまう訳ですから、そもそも「大腸がん」のことを抜きにしても、やっぱり便秘は絶対的によろしくありません。日本は「便秘大国」と言われていますが、実際に世界一、それも断トツで便秘の多い国なんです。

その他にも、高脂肪食のような欧米型の食生活や極端に辛いもの、お酒やタバコなども「リスク因子」と言われています。



そういったリスク因子を抱えている場合、40代以降で「2~3年に一回」、もしくは「4~5年に一回」は、大腸カメラ検査を受けてもらいたいです。

もちろん、理想を言えば全員に「年に一回」受けてほしいとは思いますが、患者さん側の気持ちや事情を慮ると、あまり軽率に「毎年受けてほしい」とはなかなか言えません。

 

皆さん、「大腸カメラ」に対しては「大変」とか「きつい」といったイメージがあると思うんですが、誤解を恐れず言えば、実際のところやっぱり検査は大変です。

検査の前には下剤を2リットル飲み、腸の中を完全に綺麗にしてからの検査になりますので、検査はほぼ間違いなく一日がかり。

 

働き盛りだったり、ご家庭のことで忙しくしたりしている40代や50代の方が、貴重な一日を潰してまで検査の時間を取れるかと言えば、どうしてもなかなか難しいものがあると思われます。

ですが、間違いなくそれだけの「価値」のある検査ではありますので、絶対にやった方がいいですそれだけは、断言できます。

 

 

 

“ちなみに”ついでにもう一つちなんでおくと、実は「大腸ポリープ」に関しても、その「切り方」が大事なんです。

 

「切り残し」が出てしまうと、そこから「再発」してしまうリスクもありますし、もし「悪性細胞」、あるいは将来悪性になるかもしれない「アデノーマ(腺腫)」と呼ばれる細胞を残してしまうと、最悪の場合にはポリープが悪性化してがんになってしまう恐れもあり得ます。

しかも、中途半端な大きさの切り残しだと、「仮に次の年にもう一度検査を受けたとしても、見落とされてしまう恐れが大きい」というのが、この「切り残し」の厄介なところ。

 

だから、切るのであれば、一回でしっかりと切り残しの出ないよう、綺麗に切り取らないといけないですし、もちろん出血しても困るので、出血させないようにも切らないといけないという訳なんです。




であれば、当然「なるべく苦しくないように検査を終えたい」と願うし、「できるだけ切り残しのないように綺麗に切ってほしい」と期待するのが、人情というものでしょう。

ただ、残念ながら「大腸カメラ」検査に関しては、「どこの病院に行っても同じようなレベル、苦痛、精度の検査が受けられる」という保証は担保できない、というのが実情です。



それは何故かと言えば、以前にも別の記事でお話しましたが、やっぱり検査を施行する医師の「覚悟の問題」だと言えます。

そういった「覚悟」の差が、そしてそれがもたらす「技量」の差というものが、特に大きく表れやすいと言えるのが、この「大腸カメラ」という分野という訳なんです。





……なんて、ちょっと格好いいことを言ったもんだから、妙に気恥ずかしくなってきてしまいましたが、話のキリがちょうど良いことを幸いに、今回はこの辺りで失礼つかまつりたいと思います(笑)

なお、最終回となる「後編」では、「大腸がん」にまつわるちょっと面白い歴史などについてお話したいと画策しておりますので、次回もどうぞご期待あれ。

 

山城   






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