どうも、こんにちは。
先日、友人から不意打ちのように披露された「沖縄県内に存在する車をすべて縦に並べた時の長さは、県内に存在する全道路の総延長距離よりも長い」という豆知識に、「驚き」よりも先に「納得」が来てしまい、意図せず友人に肩透かしを食らわせてしまった山城です。
そんなとんでもない事態に陥っているのならば、県内のあちらこちらで、こうも朝から晩までひっきりなしに渋滞に見舞われるのも「道理」と言わざるを得ませんよね。
──なんて、友人の仕入れた豆知識の“横流し”みたいな真似はほどほどにしまして。
友人に触発されて、という訳では“決して”ありませんが、“たまたま”今回は、僕も「内視鏡」に関する豆知識をご紹介してみたいと思います。
現在の日本において行われている医療の大半は、「西洋医学」を基礎としているものがほとんどですので、必然的に、その技術や器具なども欧米から伝わってきたものが大半です。
ですが、意外に思われるかもしれませんが、実は「内視鏡」や「胃カメラ」、あるいは「大腸カメラ」といった分野に関しては、ほとんど「日本発」だと言って差し支えないでしょう。
実際、現在の内視鏡分野における世界的なシェアを見ると、それぞれオリンパスが70%、富士フィルムが15%、ペンタックスが10%ほどのシェアを握っており、国内の3社だけで、95%以上の“パイ”を独占しているような状況にあります。
そうなると、残り5%程度の小さなパイを、ヨーロッパや韓国、アメリカの企業で細々と分け合っているという訳です。
まぁ、これは2012年のデータなので、現在では大なり小なりの変動も起きていると思われますが、「日本の企業が圧倒的なシェアを握っている」という大勢に変わりはありません。
さて、そんな「内視鏡」の歴史を紐解きますと、その原型は、1868年にドイツのアドルフ・クスマウル博士の開発した「硬性胃鏡」にまで遡ると言われています。
「硬性」と言うだけあって非常に堅く、長さ50cm弱、直径15mm弱ほどもある「杖」のような棒状の金属管の両端に鏡が取り付けられたような構造で、胃内を照らすための光源は電球などではなく、ロウソクの火に頼るものだったようです。
当然、それだけ大きい上に堅いものを呑み込める人が、そうそういるはずはありません。
そこで、クスマウル博士は、「吞剣士(どんけんし)」と呼ばれる「剣を呑み込む中国の大道芸人」に頼んで呑み込んでもらうことで、何とか胃内の観察に成功したそうです。
そうして、その後も「胃カメラ」の研究と開発は続けられることとなりましたが、フィルム撮影式のカメラと豆電球が取り付けられたり、軟性素材が採用されたりと、現在の内視鏡に近い発想と構造の器具が、実際にドイツで開発されています。
ですが、胃内の撮影能力に難があったり、患者への身体的・精神的な負担やリスクの大きさが問題視されたりと、そのどれもが臨床診断での使用に堪えるようなものではなく、実用化にまでは至りませんでした。
そんな一進一退の攻防が世界的に繰り広げられていた中、1949年8月31日の東京にて、「内視鏡の歴史は、その日に始まった」と言われる出来事が起こります。
当時、東京大学附属病院に所属する外科医だった宇治 達郎さんと、オリンパス工学工業に籍を置いていたカメラ技術者の杉浦 睦夫さんが、たまたま同じ電車に乗り合わせたのですが、折り悪く台風が接近していたせいで、翌朝まで車内で身動きが取れなくなってしまったそうです。
元々お互いに面識はあったそうなのですが、どちらもまだ30代前半の気鋭の若者でした。
当時は「胃がん」で亡くなる方が増加の一途を辿っており、2人は互いにそのことに問題意識を抱えていたこともあり、「こういった器具が欲しいよね」という風に話は大いに盛り上がり、結局朝まで一睡もせずに「胃カメラ」の構想について話し合ったと言われています。
その後、それぞれの住まいは東京と埼玉とで離れていたにもかかわらず、毎日のように仕事を終えると颯爽と落ち合い、「胃カメラ」の研究開発に没頭する日々を送るようになる2人。
思いも寄らぬ形で出会った2人が、思わぬ形で意気投合を果たしてから、ちょうど1年後となる1950年の9月。
ついに、「胃カメラ」による施術の第一号が、国内にて実施されることとなりました。
ちなみに、2人が開発した胃カメラは、超小型のカメラと光源を軟性管の先端に取り付けた構造のもので、「ガストロカメラGT‐1」と名付けられ、現在では日本機械学会によって「機械遺産」に認定されています。
そうして、その後も「ファイバースコープ」や「超音波センサー」などの様々な技術を取り込みながら国内で急速な進化を続けた「胃カメラ」の技術は、現在では、病気を「見つける」だけでなく「切り取る」ことをも可能にする「内視鏡」にまで発展するに至りました。
それにしても、「もし当時、台風の“おかげ”で電車が止まっていなかったら」、あるいは「同じ電車でも、それぞれ違う車両に乗っていたら」と思うと、2人の巡り合わせには、何か「運命」のような見えない力を感じざるを得ません。
「万有引力」の法則を閃いたニュートンしかり、「ペニシリン」を発見したフレミングしかり、やっぱり偉大な発見や発明の下には、こういった「必然」めいた「偶然」が伴うものなんですね。
そう言えば、一度「大腸カメラ」検査を受けていただくことで大半の「大腸がん」を予防できることは、以前にも別の記事でもお伝えした通りですが、いまから5年ほど前にも、非常に興味深い研究結果がイギリスから発表されていたことを、うっかりお話し忘れていました。
曰く、
「大腸カメラ検査を一度受けると、その後17年間にわたり、大腸がんの発生するリスクを低減させることができる」
とのこと。
いまや「内視鏡大国」とも言える日本は、それこそ世界で一番安心して内視鏡検査を受けられる国の一つでもありますので、自分自身はもちろん、ひいてはご家族のためにも、ちょっとだけ勇気を出して検査を受けてみてはいかがでしょうか。
山城
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