イギリス留学で学んだ、たった一つの「魔法」

ヤマシロ物語

 

どうも、こんにちは。

 

こうしてちょくちょくブログを書かせてもらうようになってから、「いちばん難しくて大変なのは、もしかして冒頭の挨拶を考えることなのでは」と気付き、密かに冷や汗をかき始めた山城です。

さて今回、「ブログに何を書こうか」とパソコンの前で一人うんうんと唸っていたところ、見かねた準備室のスタッフから「山城先生がお医者さんを目指したきっかけについて書いてみては?」という “天啓” を授かったので、今日はその啓示に一も二もなく飛びついてみたいと思います。



 

実は僕、元々は「医者になろう」だなんて、子供の頃から一度も思ったことなんてなかったんです。両親から「医者になれ」などと言われたことも、一切ありませんでした。

元々、自分が「文系人間」であることを自覚していましたし、琉球大学で物理学の教授を務めていた父親から、常日頃のように「医学は純粋な科学とは言えない」と聞かされていたことも、きっと少なからず影響していたのかもしれません。



そんな僕に大きな転機が訪れたのは、高校1年生の時です。

 

当時は、まだ沖縄が日本に復帰してから17~18年くらいで、「沖縄もどんどん人材を海外に輩出していこう」と、国際化への気運が高まっていた時期だったんですが、「沖縄の県費で毎年10名の留学生を出す」という政策が、僕が高校1年生の時に初めて実施されました。

そうして当時、担任だった英語の先生に「どうせ受からないだろうけど、肝試しとでも思って応募試験を受けてみなさい」と、身も蓋もないことを言われるがまま試験を受けてみたところ、まさかの合格。

 

晴れて10名のうちの1人として1年間、僕はイギリスに留学できる運びとなったのですが、ちなみに、この時点ではまだ「外交官を目指そう」なんて思っていたりしました。




そして、迎えた留学初日。

初めてホストファミリーに引き合わされ、緊張しながらも互いに挨拶を済ませると、僕は彼らの親戚よりも誰よりも先に、彼らの「かかりつけのホームドクター」を紹介され、何かあったらすぐ彼に相談するよう教わりました。

 

「共に過ごす家族が増えるにあたって、まずはホームドクターに紹介する」という風習が、イギリスにはあった訳です。

 

その時には、「へぇ、面白い風習があるなぁ」と文化の違いに感心するにとどまったのですが、留学してしばらく経ったある日、僕が「医者」を志すきっかけとなった “事件” が起きました。

まぁ、いま思い返せば「事件」だなんて呼べないような可愛らしい「ハプニング」なんですが、少なくとも当時の僕にとっては、命の危機を感じるほどの「大事件」でした。



何が起きたかと言うと、ある晩、いきなり全身に発疹が現れたんです。

とにかく痒くて痒くて、我慢して眠ろうにも眠れないほどに痒い。でも、真夜中にホストファミリーを起こすのも忍びなくて出来ず、一人で何とか翌朝まで耐え忍ぶと、すぐにホームドクターに受診しました。



医者になった今なら、「あぁ、単なる蕁麻疹だね」と冷静に自己診断できますが、当時の僕としては、見知らぬ遠い異国の地で、訳も分からない病気に罹ってしまった訳ですから、とにかく不安で仕方ありませんでした。

 

大宜味村の血の為せる業か、自他ともに認める「健康優良児」で、風邪さえもほとんど引いたことのないような子供でしたから、「まぁ、留学中にも体調を崩すことなんかないよ」と高を括っていた分だけ、自分の身体に起きている “異常事態” に心を搔き乱されてしまっていた訳です。

そんな状態でホームドクターに診てもらったところ、ドクターもナースも何故かニコニコと笑顔を浮かべるばかり。そのまま手早く診察を済ませると、ドクターは穏やかに微笑みながら診察結果を教えてくれました。

 

 

「君は、いきなり外国に来た訳だから、食べ物だったり水だったり、色々と身体に合わないものがあって当たり前なんだよ。その蕁麻疹は、それらが反応しただけだろうから安心しなさい」

 

 

実際、当時の僕は、普段あまり英語を理解できていなかったんですが、その時ドクターの言っていることは、不思議としっかり理解できたんです。

そうして、「こんなにちょっとした一言だけで、こうも人を安心させることができるのか」と身をもって痛感し、深く感銘を受け、「あぁ、医者っていい仕事だなぁ」という想いが、自然と僕の心に芽生えたことを、今でもはっきりと覚えています。



 

この出来事は、僕の中で本当に衝撃的でした。

 

いま思えばお恥ずかしい限りですが、ドクターに「大丈夫だよ」と言ってもらうまでは、「もしかしたら自分はこのまま死んでしまうのかもしれない」と半ば本気で思っていましたし、実は蕁麻疹が出た晩、国際電話を使って実家の母親に「もしかしたら御国には戻れないかもしれない」なんて弱音を吐いてしまうくらい、真剣に不安を感じていました。

 

それが、ドクターのたった一言で、「何だ、これだけのことだったのか」と、すべての不安から途端に解放されてしまった訳ですから、まるで「魔法」にでもかけられたような気分だった訳です。




僕はいま、あの時のドクターみたいな医者になれているでしょうか。

 

不安な気持ちでいっぱいに違いないはずの患者さんから、どこまで不安を取り除いてあげられているのかと自分自身に問い掛ければ、やっぱりいまの僕でもまだまだ足りていないんだと思います。

でも、「そういう医者になる」と思い続けて挑戦し続けなければ、絶対に「そこ」に辿り着くことはできません

 

『魔法の国』として知られるイギリスの地で、僕が学んだたった一つの大事な「魔法」を、これからも一生懸命に磨き続けていきたいと思います。

 

山城   

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